Vol.7 売れる経理屋

さすらいながら学んだ経理屋の
ノウハウをお伝えします

説明資料に「主文」をいれる!

今回は前回の続きです。

前回、表を「育てる」事の重要性を説明しました。一回ではなく、繰り返し表を作成し、継続的に状況報告をしつつ、報告の質を高める事が、組織全体の「問題解決能力」を高める、という趣旨でした。当たり前の事ですが、その表を見た時に、説明者が何を伝えたいのか、がはっきりしている事が重要です。しかし、経理の仕事の多くは「表」から出来ています。表は数字の塊です。普通、説明を受ける側は、その表を見た瞬間に作者が何を言いたいのか、を理解するのは不可能です。これをなるべく判りやすくする事が、「売れる経理屋」になるために重要な事は、お判り頂けますよね?

表を作る際、最初から「見やすさ」ばかり考えている場合はまれです。多くの場合、問題は何なのか求めている数値は何なのか、を考えながら表を作っていきます。Excelでいろいろな要素を組み入れて、ようやく求める数値が出ました!素晴らしい!しかし、ここで仕事を終えてはいけません。会社として問題を解決する際は、あなた一人が問題と解決策が判ってもほとんど意味はありません。関係者が、マネジメントが理解しなければならないのです。

まずは重要な所に○打ちをしていきましょう。自分が問題点とその解決策を説明する際に、どんな順で、何を説明するかを考え、そのポイントとなる数字に○を打って行くのです。これだけで、その表のバリューは相当上がります。当たり前のように聞こえますが、これもやらない方が多いのです。しかしこれをやらない方は、確実に「売れない経理屋」の道を歩むことになります。

更に、○打ちだけでは不十分です。何故ならば、経理屋の資料は多くの数値で出来ていますが、この数値がどこから出たのか、根拠は何か、がしっかりしている事は、当然重要ですよね。従って、計算根拠やロジックがどうなっているか、等を列挙する必要が出てきます。そうなると、一枚の表に、重要なポイントがいくつも出てくる事になりますよね。そうなるとますます、一瞬でその表を理解する事はできなくなります。しかし、会議の時間は限られており、一瞬でポイントを伝える事が必要なのです。だから、「主文=報告書の中で、最も重要なポイントを一文で書く」事が重要になります。主文をはっきり書く事は、分析そのものではありませんが、これを書く事によって、あなたの資料は初めて「切れ味のいい分析」になるのです。

しかし多くの経理屋は、この「主文」を書きません。良い資料なのに誰も見ていない。本当に勿体ない、と思う事がよくあります。なぜそんな事をするのでしょうか?あまりはっきりものを言いたくない、おとなしい方が経理屋に多くいる事もあるとは思うのですが、それだけではない気がします。どうも「経理屋」としての「育ち」がそうさせている面がある気がします。と、言いますのは、経理屋が作成する最も重要な資料の多くは、「どれもこれも重要な数字」の資料が多いのです。典型的なのはバランスシートです。苦しい決算業の果てに出来たバランスシートは、会社の中身を一目で表します。その内容を一口で言い表すのは基本的に不可能です。更に、決算業務を始めとして、数値の塊の「表」を作った所で経理屋の仕事は終わりだ、と育てられてきた面があります。確かに、決算〆(締め)は経理業務の重要な一里塚で、これが終わると「やれやれ」ではありますが、これでは経理屋はおろか、せいぜい伝票作成者でしかありません。

更に、「〆てやれやれ」は、財務会計を中心とした世界で、より経営に近い管理会計は、経営の問題点を「ピンポイントで」「えぐりだして」「必要部門で共有し」「継続的にモニタリングし」「改善してゆく」業務の比率が多くなってきます。今まで経営に携わる方々が気づいていなかった問題点を「ピンポイントで」「えぐりだす」ためには、自分が作った表の中で、何が問題なのかを、はっきりと説明しなければ始まりません。そのためにも、一枚の表は、一つのきっちりした「主文」にまとめられるストーリーを構成している事が重要です。

例えば、会社のキャッシュがどんどん減っている、このままだと来年5月に資金が底を尽きる、と言う話だとしましょう。まずは最初の一枚で、最近の資金状況を説明すべきです。主文は、「売上は急成長の一方、長い売掛金回収期間により、手元のキャッシュは減少が継続。」ですね。こんな話、よくありますが、経営者にとっては超重要な話です。そうやって経営者の気を引き、表を見て頂く。すると、月別に売上高は増加している数値と、キャッシュ残が減って行く数値に○打ちしてあったりすると、もう経営者はこの表から目が離せなくなります。この際重要な事は、増加する売上高と、減って行くキャッシュ残が、一枚の紙に表現されている事です。ページをペラペラめくらないと話が判らないと、大抵の経営者は怒り出すか、話を聞いているふりをしているだけになってしまいます。

「売れる経理屋」としては、「主文」が刺激的である事と、表が判りやすいように工夫されている事は、必須の条件です。特に何枚かの表で話をしようとする場合、一枚目の「主文」は刺激的でなければなりません。なぜなら、それは経営的に問題があることを示す必要があるからです。経営に問題がないなら、何も言うべきではありませんし、そもそも資料を作るべきではありません。「これは問題だ!」と言うために資料を作ったのでしたら、一枚目で確実に、その問題点を経営者に伝え抜く事が大切です。ところが、現実にそれを実行している経理屋は非常に少ないのです。私は一週間に一度は必ず、「この表の主文は何?」と言う質問を、過去15年くらい、どの会社でも言っています。御社もきっとそうです。ですから、そこだけでも忘れず実施して頂ければ、僭越ではありますが、あなたの来年の昇給の可能性、高まると思います!

一方、上記に挙げたような問題点は、それだけで終わってはいけません。「二枚目」「このまま行ったらどうなる」と言う「ホラーストーリー」が必要で、これが「主文」になっていなければなりません。先ほどの資金繰りの話を例にとりますと、「このままでは201X年5月に資金ショートになる。黒字倒産の可能性あり…」とでも書きましょう。大きな赤丸で、201X年5月の資金残「△6百万円」に○打ちして。二枚目の説明はそう長くはかかりません。一枚目で直近まで伸びている売上高と、減って行く現金の関係が判っていますから、その延長で確かに、どこかの段階で資金が尽きる、と経営者はすぐに判るはずです。

そして当然、「解決策」を提示する「三枚目」が続くべき事、皆様もうお判りですよね?その一方で、経理部門だけではすべての問題を解決できないから、会議で「問題だ」と言う訳ですよね?そうなると、「三枚目」の「主文」は、どの部門が協議して、何をすればよいのか?が明示されている事が重要です。例えば先ほどの例だと、「営業部門は売掛金回収期間の短縮を○月までに実施が必要」とか、「財務部が銀行から4月中に○百万円借り入れ増必要」とかが主文になると思います。

この三枚目、これまた「売れる経理屋」とそうでない方を分ける試金石です。他部門に躊躇せず、しかもきっちりと、ロジカルに、口をはさめるかどうかは、管理会計責任者、あるいはCFOにとって、超重要なポイントです。これを実施し、会社を動かしてゆくには、その内容がしっかりしている事がまず重要ですが、それに加えて、上記に示したような、「主文と数値が対をなして」「短時間で説明でき」「不適切に他部門を攻撃していない事」が重要です。

今回は少し長くなってしまいました。この辺りでおしまいとさせて頂きます。
皆様本年もどうぞよろしくお願い致します。

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プロフィール

井筒 廣之
1984年、日系メーカー入社。経理屋として仕事を始める。
1990年、社内ベンチャーに挑戦、一応成功する。
1997年、メーカー退職、本当のベンチャー企業に挑戦。資金難で「胃が口から出そうな」苦しみを味わう。
1999年、大手飲料会社の管理課長として転職。管理部長に昇進。
2004年、商社CFOとして転職。
2007年、マンパワー・ジャパン(現マンパワーグループ)入社。
2014年、取締役代表執行役社長退任。

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